
環境問題に関心はあるけれど「何から始めればいいのか分からない」「頑張りすぎて疲れそう」と足踏みしていませんか?それは、自分の暮らしや家族の未来について真剣に見つめ始めたサインかもしれません。
今回は、プラスチックフリーのオンラインショップ「mirawings」を運営し、環境に関する対話イベントなども手掛ける松本友実さんに、無理なく心地よく続けられる地球にやさしい暮らしのヒントを伺いました。
インタビューから見えてきたのは、「地球のため」という義務感を手放し「自分が心地よいか」を軸にすることでエコ疲れから解放されるという意外な事実。何から始めたらいいのかわからない方への、今日から無理なく踏み出せる最初の小さな一歩についてもお聞きしました。
| 妊娠と山奥での原体験。プラスチックフリーへとつながった「自然な選択」
ーー 松本さんは、プラスチックフリーのオンラインショップや環境に関する対話イベントなどをされていますが、環境に関する活動を始めようと思った最初のきっかけは何だったのですか?
一番最初のきっかけは、娘を妊娠した時でした。食事で子どもの体が作られるんだと改めて実感したときに、食べているものや、日頃使っている日用品が急に気になり始めたんです。いろいろ調べていくうちに「体にいいものって、やっぱり地球にもいいのだな」と気づいて、なるべく優しいものを探すようになっていったのがスタートでした。
娘は2018年生まれなのですが、ちょうどその頃、子育て雑誌で2020年のレジ袋有料化に向けた特集が組まれていました。その時に読んだ記事でプラスチックが地球環境や体に与える害について知り、「プラスチックは体によくないんだ。自分でも調べて、できることからちょっとずつ減らしていこう」と思ったのがきっかけでした。
ーー 学生時代や幼少期など、今の活動の原点になるような体験がありますか?
もともと実家は山奥で自然豊かな田舎でした。幼い頃から自然の中で暮らして動物も多く飼っていたので、自然の中で暮らすことが当たり前でした。大学は畜産の大学に通い、就職も動物の飼育の仕事をしていました。子どもたちに移動動物園で飼育体験をしてもらったり、「命の授業」のような形で魅力を伝えたりする仕事もしていました。
環境問題への関心はずっと昔からありましたね。例えば、小学校の授業では地球温暖化について調べて発表する機会もありました。関心はずっとあったのですが、当時は具体的に「電気を使いすぎない」くらいで、大きな行動まではできていませんでした。
実家では薪ストーブを使っていたり、コンポストをやっていたり、鶏を飼っていて食べきれない野菜くずは鶏が食べて…という暮らしでした。それが当たり前の生活の中で、この循環する暮らしが自分にとって心地よくて…。巡り巡って、その心地よい暮らしにまた戻ってきたような感覚もあります。
|「地球のために」で陥ったエコ疲れ。“完璧を目指さない”ことで見えた暮らしの楽さ
ーー プラスチックフリーやサステナブルな暮らしを実践する中で、日常の小さな一歩は何でしたか?
妊娠したときは優しい洗剤に変えたりしていました。プラスチックを意識し始めてからは、毎日使っていた食品ラップを見直しました。使い捨てではなく、洗って繰り返し使える「蜜蝋(みつろう)ラップ」に変えてみたり、スポンジを天然素材のものに変えてみたり。今使っているものを、違う素材のものに置き換えるところから始めました。
ーー お子さんのことや未来のために「変えなきゃ」と思って、すぐに切り替えられたのですか?
実は最初は「やらなきゃ」というより、「こんなのがあるんだ!」という興味や好奇心が先でした。実際に蜜蝋ラップを使ってみたら、カットした野菜を包んでおくとすごく長持ちしたんですよ。普通のラップを使うよりも長持ちして使い心地がよく、「便利だな」と実感して使っていた部分が大きいです。実験してみたら思ったのと違っておもしろくて、日々の小さなことを変えてみたという感じですね。

ーー 好奇心で試してみたら良さに気づいたというのは素敵ですね。ただ、途中で完璧にできなくて落ち込んだり、エコ疲れして挫折してしまう方も多いと聞きます。松本さんは、エコ疲れの時期はありましたか?
エコ疲れはありました。最初は子どもも小さかったですし、動機が「地球のために」「未来のためにやらなきゃ」というところから入っていたんですよね。そうすると「やらないと」「頑張らないと」というモチベーションになってしまって。
例えば、布おむつを使っていた時期もあったのですが、洗濯をするという家事が一個増えた感覚になっていたんです。「みんなは普通に捨てているのに、なんで私だけ頑張って洗濯して干しているんだろう」と感じるようになってしまいました。当時は夫もそこまで理解があったわけではなかったので、私一人で頑張っていると感じて疲れてしまい、そうした取り組みから離れた時期もありました。
ーー 一度離れたところから、どのように乗り越えて今のスタイルに戻ってこられたんですか?
一番は「完璧にはできないな」と割り切れたことです。現代で生きる上では山奥で仙人みたいな生活でもしない限り100%完璧なんて無理だなと思いました。「そこは目指さなくていい。できることだけやっていこう」と思えたことで楽になりました。
それに、子どもが大きくなって手が離れていく中で、改めて自分が無理なく続いているものを見たときに、蜜蝋ラップのように自分が「心地いい」と思えるものは続いていたんです。
布おむつも三人目で再開したのですが、今は洗濯するのが好きで心地よくやっています。何より、紙おむつを買いに行ったり在庫を管理、またゴミを捨てる手間もないんですよね。最近親戚が来て姪っ子たちの紙おむつのゴミ処理をしたときに、「紙おむつって買い出しやゴミ捨て、匂い対策という別のストレスや家事負担があったんだな」と気づきました。
増えた家事もあるけれど、減った家事もある。「環境のために頑張る」というよりは、「自分が心地いいから」「実は楽になっているから」という視点に目を向けたことで、本当に無理なく続けられるようになりました。
| 家族の幸せが一番大事。周りに押し付けず自分らしく楽しむサステナブルな工夫
ーー プラスチックフリーの暮らしを続ける中で、松本さんが特に愛用しているアイテムや日常の習慣はありますか?
ネットショップを運営しているので、自分の心地いいものや好きなものは大体ショップに出しているのですが、特にお気に入りなのは木製のメイクパレットです。普通は使い捨てのプラスチック製が多いですが、これは木製で見ためもかわいくて。中身が磁石でくっついていて、無くなったら交換できるので、パレット自体は一生使えるんです。使うたびにテンションが上がりますし、心地いいですね。
私自身、数年前はドラッグストアで買えないようなエコアイテムをネットで探して揃えるのにす

ごく苦労したんです。だから「こういうアイテムがまとめて買えるショップがあるといいな」と思ったことも、オンラインショップを始めたきっかけの一つでした。
習慣は、自然の力をうまく利用することを意識しています。朝早く起きて電気をつけず、自然の光の中だけで読書をしたり活動したりするのがすごく好きです。洗濯物も日の当たる前に干しておいて、夏の太陽で一気に乾かします。太陽のエネルギーを利用して、自分も自然の一部として暮らす感覚がとても気持ちいいです。
ーー ご家族や周りの方へ伝える際に意識している伝え方の工夫やヒントはありますか?
実はこれも、最初は大失敗したんです。地球のことを調べて「もっとやらなきゃ!これが正義だ!」みたいなマインドになってしまって、夫に「なんで協力してくれないの?」「なんでこんな使い捨てばかり買うの?」と押し付けてしまっていたんですよね。でも、人って押し付けられるとすごく引いてしまうじゃないですか。まだその考えに至っていない人に正論をぶつけても引かれてしまうんだと、自分の失敗から深く反省しました。
それからは、友達や周りの人にも自分から熱弁することはやめました。今はこういう仕事をしているのでSNSや自己紹介で知ってもらっていますが、「私は好きでやってるよ」というスタンスで、聞かれたら答えるくらいにしています。
ーー ご主人とのコミュニケーションや関係性も自然と変わっていきましたか?
全く押し付けなくなりましたね。私は私でやっている、というスタイルです。例えば食器用スポンジも、夫には天然のヘチマスポンジが使いにくかったみたいなので普通のスポンジも置いてあります。我が家はワンオペ育児で家事はほぼ私がやっているので、私の裁量で変えられるところを静かに変えています。
サステナブルな暮らしを発信されている服部雄一郎さんご夫妻とお話しした際に、「地球にいい暮らしと、家族の幸せ。どちらが大事かと言えば、やっぱり家族の幸せ」とおっしゃっていました。まず家族の幸せや心の余裕があってこそ、環境にも目を向けられるんですよね。家族関係を良く保つためにも、押し付けずに自分は自分で楽しむというバランスが、我が家には一番ちょうどいいなと思っています。

ーー 環境問題に関心はあるけれど何から始めていいか分からないと感じている方へ、今日からできるアドバイスやメッセージをお願いします。
「何かしたいな」と気づいている時点で、もう確実に第一歩を踏み出せていると思います。
何か新しいアイテムを買って置き換えることだけがエコではありません。食べ残しをしない、ものを無駄にしないといった当たり前のことからでも、今日から十分始められます。
「手作りしたりして家事や負担が増えるのでは」と思われがちですが、自分の好きな家事からちょっと変えてみるのがおすすめです。私は洗濯が好きだから布おむつも苦になりませんが、お料理が好きな方なら手作りおやつを作ってみるだけでも、個包装のお菓子のプラスチックごみを減らせますよね。自分の「好き」に合わせて変えてみると、楽しく続けられると思います。
そうやって発信している方たちも、10年くらいかけて少しずつ今の暮らしに辿り着いています。一気にやろうとせず、無理のないペースでちょっとずつ変えてみて、その中にある心地よさや気持ちよさを感じてもらえたら嬉しいです。
何から始めたらいいか分からない方は、InstagramやYouTubeで素敵なエコライフを発信している方を参考にしてみるのもおすすめです。「これならやってみたい」「ワクワクする」と思ったものを、ひとつ真似してみるだけでいいんです。
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