Written by: Tomoko Horie

「更年期」という言葉を聞いたとき、どんなイメージが浮かびますか? どこかネガティブで、できれば遠ざけたいもの――そんな印象を持っている方も多いかもしれません。
けれど、もし少しだけ見方を変えられたらどうでしょう。その時期の受け止め方や過ごし方は、想像以上に前向きで心地よいものに変わるかもしれません。
今回は、更年期セルフケア専門家として多くの女性の悩みに寄り添い続ける山内さちこさんに、多忙な毎日でも無理なく続けられるセルフケアの習慣や心構えを聞きました。
インタビューで見えてきたのは、不調や不安は「自分軸」を取り戻すことで心地よく乗り越えられるということです。プレ更年期世代が今すぐ始められる具体的なケアや、更年期を「人生のゴールデンタイムの入り口」として迎えるためのヒントをお伝えします。
| 自分の「ココロとカラダ」に余白を作るセルフケア
ーーさちこさんは、更年期のセルフケアのプロとして幅広くご活躍されていますが、お仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
私が更年期に入った頃は、今みたいに「私、更年期かも」と気軽に明るく会話をシェアできる時代ではありませんでした。
当時私はサロンを経営していたのですが、少し年上のお客様たちに異変が起こり始めて。お客様から「これは更年期のいろんな症状なんだと思うんだけど、どうしたらいいと思う?」「アロマやハーブで何かできることはないかしら?」とご相談を受けるようになりました。
私自身はまだ少し先でしたけれど、いずれ通る道です。だからお客様のサポートをしながら、私自身も更年期に備えなきゃと思ったのがきっかけでした。
ーー当時はそういった正しい情報を教えてくれる存在がいなかったのですね。
自分で調べて、経験者たちに聞いてみるしかありませんでした。まだ更年期の症状がでていない45歳ぐらいの時でしたから、お客様の声と自分の経験、情報を合わせて学んでいきました。ちょうど更年期の入り口だったので「これからの予防に役立てられる」「同世代のお客様が多いサロンだから皆さんの役に立てる」と思って。
相談を受けると、皆さん最初はネガティブモードなんですよね。「更年期って恥ずかしい」「女じゃなくなっちゃう」「生理が終わったらおしまいなのかな」など、固定観念にとらわれてしまう。
だから私はそれをなるべく笑い飛ばして、「ちょっと準備して自分のスイッチを変えるだけで、ネガティブなことばかりではないのよ」とお伝えしてきました。日本の外に目を向けると「年齢を重ねるほど女性は素敵」という文化もあるのに、日本は自虐的になりがちですよね。でも40代・50代でも素敵な方はたくさんいますから「大丈夫よ」と発信していきたかったんです。
ーーまだ症状が深刻でないプレ更年期(30代後半〜)のうちにどういったケアを始めるといいでしょうか。
プレ更年期の世代は、婚活、出産、育児、キャリアアップ、起業など、ライフスタイルが多様で一番忙しく、オーバーヒート状態になっている方が多いんです。だからこそ、自分の身体を調えていくことが大切になります。
1日5分でもいいので心を静めて自分を見つめる時間を作ってほしいですね。その一番のバロメーターが生理の変化です。生理痛がひどくなったり、量が変わったり。忙しいからと鎮痛剤やピルで済ませる前に、自分の身体を振り返ってみる。

例えば、映画を観て感動して泣くことでも、おいしいものを食べることでもいいので、自分にとって「心地いいこと」をセルフケアに加えてあげる。無理な約束を重ねないように断ることも立派なセルフケアです。自分に余白を作ってあげると、体調も調って、リカバリーも早くなりますよ。
| 自分の「五感」と「自分軸」で選ぶ香りと四季の工夫
ーー日常で取り入れやすいセルフケアや、ハーブ・アロマの活用法について教えていただけますか。
ハーブって難しく考えられがちですが、もっと簡単でいいんです。私はベランダで月桂樹(ローリエ)を育てているのですが、葉を摘んで少し淵をカットしてお白湯に入れて朝飲んでいます。月桂樹はやる気や体内の活力をアップさせてくれて、胃腸の働きも高まるので、ウォーキングの前もおすすめです。月桂樹でなくても、オリーブの葉、バジル、ミントなど、キッチンハーブを買って試してみるだけで十分ですよ。
アロマテラピーでも「更年期に効くアロマは何ですか?」とよく質問されます。でも、ハウツー本に書いてある効能で選ぶ必要はありません。一番大切なのは、自分にとって「心地いい」と感じる香りを選ぶことです。
すうっと鼻に入って心地よく深呼吸ができる精油を見つけると、肺の機能が高まり、呼吸が深くなって自律神経が調います。「ラベンダーがいい」と言われても好きじゃない人もいますし、朝と夜で心地よく感じる香りが違うこともあります。
ショップに行ったら自分の五感を最優先して、ムエット(試香紙)につけた香りをじっくり全身でまとうように感じてみてください。「脳のあたりに隙間ができてきたな」「呼吸が深くなるな」「頭が楽になるな」と実感できる香りが、あなたのお守りになります。
知識にとらわれて勉強のようにやると続きません。「自分の気分を上げてくれる香り」「お守りになる香り」を自分軸で選ぶこと。自分の感覚に素直になることが、アロマテラピーの楽しさですね。
ーーさちこさんのご著書にある「四季を3つに分けて捉える」という考え方もとても素敵ですね。
日本には美しい四季がありますが、ひとつの季節を「気配(走り)」「盛り」「名残」の3つに分けて楽しむという考え方です。季節を迎えて、楽しんで、見送る。
例えば2月の立春頃はまだ寒いですが、正月過ぎの小春日和に身体は春の気配を感じて開き始めます。骨盤や肩甲骨が微妙に開き始めると、タラの芽などの苦味のある山菜が出てきますよね。その山菜を食べることで、冬の間に溜め込んだものを外に排出するデトックスモードになってきます。

夏から秋なら、お盆が過ぎてスイカが旬を終えた頃に、はしりの梨を食べて秋を迎える準備をする。忙しい現代人は季節を「迎える」ことができず、気づいたら季節が過ぎていたという方が多いですよね。農耕民族である日本の豊かな風土や旬の食材に目を向け、季節を意識して過ごすだけでも、自然と身体を調えるセルフケアになりますよ。
| 更年期は「人生のゴールデンタイム」の入り口
ーー「自分軸で選ぶ」「自分を労わる」という意識を持つだけで、更年期に対するイメージがガラリと変わりますね。
本当にそうなんです。セルフケア情報がたくさんある中で、「誰かがやってるから」「タレントさんが薦めているから」ではなく、「自分にとって心地いいか」という自分軸で選ばないと、セルフケア自体が「しなければならない義務」になってストレスを生んでしまいます。
自分をニュートラルにして、手放せるものは手放す。1日5分でも自分と向き合う時間を作る。そうやって自分を大切にして余白を作っていくことが、心地よく過ごすための鍵です。
更年期はネガティブな時期でも、終わりの時期でもありません。これまでの忙しい日々から少し立ち止まり、生理からも解放され、自分自身の心と身体と魂を調和させて、自分が主役の人生を歩むための準備期間なのです。
子育てもひと段落したり、仕事でも自分のペースがつかめてきたりして、ここから先はもっと自分らしく、成熟した大人の女性として人生を楽しめる時間が増えていきます。
だからこそ、私はいつもお伝えしているんです。更年期は決して怖がるものではなく、むしろこれから始まる「人生のゴールデンタイムの入り口」なのよ、と。
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山内さちこ
1998年に横浜元町でサロンを開業して以来、「お客様こそが私の先生」をモットーに、一人ひとりとのコミュニケーションを大切にして26年が経ちました。アロマテラピー、リフレクソロジー、メディカルハーブ、中医学、整体、食養生など、さまざまな自然療法を学び自ら実践。「お客様にとって本当に必要なセラピーとは何か」を追求し続けた結果、現在のスタイルにたどり着きました。現在は、更年期の不調に悩むすべての女性へ、アロマ・リフレクソロジー・カウンセリングを組み合わせた独自メソッドを提供。健康と美しさを一生の財産にできるよう、心を込めてお手伝いしています。
インスタグラム:https://www.instagram.com/sachiko_kounenki/ |
